小学生からの英語学習 親はどう教える?親も英語が苦手なときは?
2021年5月28日
2020年の教育指導要領の改定により、小学校から英語を学び始めることになりました。保護者の方の中には、学校の授業だけでは心配…と考える方もいるかもしれません。
しかし、親が英語に苦手意識がある場合は、どうやって子供に英語を教えたらよいのでしょう?
英語が苦手であっても、子供と一緒に楽しく英語を学べる方法はあると、日本・アメリカの大学で英語教育を学び、現在は留学&英語学習コンサルタントとしても活動する内田綾子さんは言います。
この記事では、具体的にどうやって小学生の子供に英語を教えていくか、親の関わり方、外部サービスの上手な活用方法などを解説していただきます。
この記事の目次
新時代の小学校英語教育
文部科学省による教育指導要領の改定が行われ、2020年度から小学校3・4年生で外国語活動(週1コマ)および5・6年生で外国語(週2コマ)の授業が開始されました。
一部の私立学校を除き、基本的に外国語=英語ですので、英語の授業が始まったことになります。
ちなみに、5・6年生からは「活動」ではなく「教科」となるため、他の科目と同じく英語の成績もつくようになりました。
小学校低学年で習うレベルの英語とは?
小学校3年生で外国語活動が始まると、およそ週1回のペースでALT(外国語指導助手)の先生も交え英語を学んでいきます。
3年生では、まずABCソングや英語の歌を歌ったりしながら楽しく英語を学びます。色や数、曜日なども学んでいきますが、外国語に対する苦手意識を持たないよう、英語に慣れることを意識して授業が行われます。
教科書で行う学習については、たとえば「好きなものについて話そう」というテーマが取り上げられています。
I like…のあとに好きなものを書き込み、自己紹介をするといった活動が想定されますが、複雑な英文を扱うことはありません。
また、3・4年生のあいだは英語で自己表現をしようという試みが中心ですので、英語を読んだり書いたりといったことは求められず、英語を聞いて話す活動がほとんどになります。
そして、メインの学習部分とはなりませんが、「国際理解」も指導内容に含まれているため、活動中に英語とからめて外国の文化などについて触れるといった取り組みも行われています。
小学校高学年で習うレベルの英語とは?
小学校5年生からは英語が教科となり、授業時間数も週2回程度に増えます。3・4年生までと同様、英語を聞いて話す「自己表現」の割合が高いものの、それに加え高学年では「国際理解」および英語の読み書きが加わります。
書き取りについては、まずはアルファベットの大文字・小文字のなぞり書きから始まりますが、6年生では例文を参考にして英作文も行います。また、小学校卒業までに学ぶ英単語数は、3・4年生次も含めると約600~700語にもなります。
高学年からは英語の「勉強色」が強まる
上記で述べたように、高学年からは英語の読み書き(特に書き)が入ってきますので、3・4年生の時よりも勉強色が強くなります。何も準備をせずに授業に出るだけだと、理解が追いつかず英語に苦手意識を持ってしまうかもしれません。
また、高学年では英語の成績がつくように。しかし国語や算数などほかの教科のように「テスト」を利用した評価はあまり推奨されていないため、授業態度などの行動観察を主な要因として成績をつける小学校がほとんどでしょう。
そのため、勉強色が強まるものの、授業内容を理解したかどうかのチェックがあやふやとなる可能性があります。
小学校の間は、「英単語を書けること」は求められておらず、あくまでも理解できれば良しとされています。しかし、中学校に入学したら小学校で学んだ単語は「書けるもの」として扱われることを考えると、書き取りを含めしっかり学んでおいたほうが良いでしょう。
親が子供に英語を教える方法
小学校での英語教育開始を受けて、子供にはできるだけ早い段階から英語学習を始めさせたい、と思う保護者の方は少なくないでしょう。
しかし、特に英語に苦手意識がある保護者の方の場合は何をどうやって教えたらいいのかわからないという方もいるかもしれませんね。家庭で、親子で一緒に英語を学べる方法を紹介しますので、ぜひ試してみてください。
テレビ番組や読み上げCDなどの活用
手軽な方法として、テレビ番組やCD、YouTubeなどの動画を一緒に見る方法があります。
- 子供と一緒に、NHKのEテレなどで放送されている英語番組を見る
- CDやYouTubeを利用してマザーグースの歌を口ずさむ
- 簡単な英語絵本を親が読み聞かせる
などの方法がありますよ。
もし簡単な英語絵本でも読み聞かせが難しい場合は、朗読CDや音声ダウンロードを利用して、代わりにネイティブスピーカーに読み上げしてもらえばOKです。
中でも子供用の英語番組は、毎週定期的に放送されているため、無理なく続けられおすすめです。
なお、動画を見る場合の注意として、できるだけ子供と一緒に番組を見るようにして欲しいということがあります。
小学生、とくに低学年のうちは、自発的に英語を勉強しようというお子さんばかりではありません。上手に親が働きかけをすることで、子供が英語に対して前向きな気持ちを持つようになります。本格的な高学年の授業に入る前に、まずは親子で「一緒に」楽しむことが大切です。
親子でフォニックスを覚える
英語のアルファベットには、2種類の読み方があることをご存知ですか?
日本語のひらがなは「あいうえお」としか読みませんが、英語の場合は「アルファベット読み」と「フォニックス読み」の2種類があります。たとえば、ABCはアルファベットの読み方だと「エービーシー」となりますが、フォニックスの読み方では「アーブークー」となります。Aは「ア」、Bは「ブ」、Cは「ク」と読むからです。
基本のフォニックス読みをマスターするだけで、短い単語(3語、4語程度)であれば初めて見た単語でも読めるようになります。もちろん、複雑なルールを理解すれば長い単語でも読めるようになりますが、まだそこまでマスターする必要はありません。
将来、知らない単語に出会った場合も発音が分からないということがなくなりますので、英語上達にとても役立つスキルです。英語を楽しむのと並行して、ぜひ親子で「フォニックス」を覚えましょう。
フォニックスなんて難しそう!と思うかもしれませんが、アルファベット読みを歌いながら覚えるのとそれほど違いはありません。
市販の書籍も多くありますし、YouTubeなどでも参考になる動画がたくさんアップされています。下記の動画などを利用して、ぜひ親子で一緒に口ずさんでみてください。
英語はアウトプットも重要!その方法は?
家庭で英語を楽しむメリットは多くありますが、どうしても英語を聞いたり読んだりといったインプット中心になりがちです。英語はコミュニケーションツールですので、小学生のうちにアウトプットの機会も持ちたいものです。
保護者の方が英語に苦手意識がある場合、英語のあいさつや簡単なフレーズのやりとりはできても、まとまった内容を英語で話すのは難しいかもしれません。特に高学年になるとその傾向が顕著になる可能性があります。
その場合は、無理をして教えるよりも、外部のサービスや専門家に頼ったほうが効果的です。
オンライン英会話の利用
保護者が英語を話せない場合、アウトプットの機会としては英会話学校の利用がおすすめです。通学形式でも良いですが、自由に受講スケジュールを決められるオンライン英会話の利用も便利ですね。
外国人と英語で話せた!という感覚はとても嬉しいもの。外国人を目の前にして緊張することがなくなるのももちろん、英語をもっと勉強しようとモチベーションも上がりますし、英語力アップにもつながります。
専門家に指導やサポートをお願いする
「餅は餅屋」という言葉があるとおり、専門家に指導やサポートを依頼することが大切です。保護者が無理をして自分で教えようとすると、効率が悪かったり間違った内容を教えてしまったりすることも考えられます。
その場合、かえって子供が英語に苦手意識を持ってしまう可能性もありますので、必要なサポートは外部にお願いすることも考えてみてくださいね。
外部を頼る際、親がやるべきサポートとは?
英語のサポートを外部のサービスや専門家にお願いする場合、英語が苦手な保護者はどんなサポートをしたらよいのでしょうか。
マネージャーとして学習管理をする
小学生はまだ、自己管理能力が未熟です。英語を勉強しようと思っていても忘れてしまったり、気分が乗らなかったりすることもよくあるでしょう。
身近にいる親がマネージャーとして、スケジュール管理や声掛けを行っていきましょう。たとえばオンライン英会話を始めたなら、無理なく続けられるように受講予定を組んだり、子供にレッスンの感想を聞いたりしてください。子供に任せっきりにせずに、保護者が寄り添い見守れる状態が理想的です。
身近な親がサポートするのがベスト
小学生は、心身ともに成長が著しい時期を過ごしますが、まだ自立をするには幼い年齢です。ほかの科目と同様、英語学習は続けていくことが何よりも大切ですが、学校や習い事の状況を踏まえて無理のないようにしましょう。
そのためには子供の近くで過ごしている保護者が、体調管理や学習の様子を確認しながらサポートをしていくのがベストです。
まとめ:小さいうちは家庭で、大きくなったら外部サービスを活用しよう!
- 低学年のうちに、英語CDや英語番組を家庭でも楽しみましょう
- 家庭で一緒に、「フォニックス読み」をマスターしましょう
- 英語のアウトプット(話すこと)は、オンライン英会話の利用がおすすめ
- 英語が苦手な保護者は、自分で教えずに外部サービスや専門家を上手に活用しましょう
- 保護者は子供のマネージャー、サポーターとして見守る役割を果たすのがベスト
保護者に英語の苦手意識があっても、上記を心がけることで「英語が大好き」なお子さんに育つことは可能です。ぜひ、紹介した内容を実践してみてくださいね!
<取材協力>
内田綾子さん
上智大学文学部英文学科卒業後、サンフランシスコ州立大学大学院にてTESOL修士号取得。その後ウーロンゴン大学大学院教育学部博士課程進学。
元上智大学、横浜国立大学、白百合女子大学非常勤講師。
現在は留学&英語学習コンサルタントとして活動中。
著書:CD BOOK 英語の出し入れ実践トレーニング(ベレ出版)
ロングマン完全パックTOEIC TEST入門編・上級編(ピアソンエデュケーション)など。